ただひたむきに前を向いて「前進」するだけが、生きることではない。<br />いつの時代も、人は何万年もの記憶の集積の上に今を生き、自分もまた忘れがたい過去の集積体なのだ。<br />雑事に追われる日々の中に、無意識の声、遠い過去からの足音が聞こえてくる。<br />変わり続ける世相の中にも、予測しえない未来がふと浮かぶ。<br />ときに反時代的であっても、後ろを向きながら前へ進む――混迷と不安の時代を生き抜く「背進」の思想。<br />