樹木を愛でるは心の養い、何よりの財産。<br />父露伴のそんな思いから著者は樹木を感じる大人へと成長した。<br />その木の来し方、行く末に思いを馳せる著者の透徹した眼は、木々の存在の向こうに、人間の業や生死の淵源まで見通す。<br />倒木に着床発芽するえぞ松の倒木更新、娘に買ってやらなかった鉢植えの藤、様相を一変させる縄紋杉の風格……。<br />北は北海道、南は屋久島まで、生命の手触りを写す名随筆。<br />(解説・佐伯一麦)