歩き旅の愉しみ:風景との対話、自己との対話
希望に満ちた風が小径に吹く風を先導する。
来たるべきさまざまな出来事、さまざまな発見、制約のない時間を想像するだけで幸せに満たされる。
旅は出発するずっと前から、はじまっている――。
フランスの社会学者が、〈歩いて移動する〉という行為と、そこから生まれる幸福感について味わい深い文章でつづった一冊。
「歩くこと」「旅すること」について書かれた古今東西の名著からも引用しつつ、歩き旅の歴史的・文化的な背景についても考察する。
日常から少しだけ離れることで生まれる多彩な視点に気づかされる思索の書!(本書より)《ルソーは、その著書『エミール』で旅について言及し、そのことをうまく表現している。
「わたしたちは、都合のいいときに出発する。
好きなときに足を休める。
うんと歩きたいと思えばうんと歩くし、そう歩きたくなければすこししか歩かない。
わたしたちはその土地のすべてを観察する。
右へ曲がったり、左へ曲がったりする。
わたしたちの心をひくあらゆるものをしらべてみる。
どこでも見晴らしのいいところには足をとめる 」これこそが、歩き旅の大切な哲学であり、その人その人にふさわしい大自然の中での歩き方だ。
「私は、歩いている間は永遠の日曜日のように感じていた」と、ドイツの小説家であるヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフは書いている。
旅人にとって、明日はつねに別の日で、今日こそが貴重な日なのだ。
》《フランスの旅行作家、シルヴィアン・テッソンは ’黒い道’を歩きながら、母親の命をよみがえらせる。
……「母のことを思い出していると、突然、母の姿が浮かび上がり、僕をエスコートしてくれた。
なぜ亡くなった者の思い出は、風に揺れる木の枝や丘の尾根の連なりのような何でもない光景と結びついているのだろう?」道を歩きながら抱くはかない幸福感は、かつて大切だったけれども今はこの世にいない親しい者たちの振る舞い、微笑み、笑顔を思い出させる。
道歩きは過去をよみがえらせ、自分の生き方を考え直させ、人生のさまざまな瞬間に自分のそばにいてくれた人たちのことを思い出させる。
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