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生きることに〇×はない

44年ぶりに名著復刊です。
在野の哲学者・能評論家であった戸井田道三の自伝的エッセイが、鷲田清一氏の解説、植田真氏のイラストを加えて生まれ変わりました。
青少年向けに書いたこの本で、戸井田は一貫して「生きること」の意味について、自身の体験をもとに語ります。
母親との死別、結核などの大病、関東大震災での朝鮮人虐殺……と、本書で取り上げられている戸井田の話は決してハッピーな内容ではありません。
身体が弱く、何度も死にそうになりながらも生きながらえた戸井田は、死を語ることで「生きる意味」について思いを巡らし、「死なないでいる」ことの意味を知るのです。
「自分の生きることを生存と生活という二つのレベルにわけ、単なる生存でなく人間として意味ある生活をしたいと考えていたのですが、生きることに生存と生活の区別などありはしないのでした」。
そう語る戸井田の言葉は、「生きがい」や「生きることの意味」にこだわりすぎる現代人の心に、静かな波紋を起こすのではないでしょうか。
そして、いまや戦争が遠い国の話ではなくなってしまった現実に直面する私たちに、この本は「いのち」について考える機会を与えてくれるでしょう。




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