ドイツ占領下のフランス。主人公のジュリアンは強制労働から逃げ出し、故郷に潜伏する。『赤いベレー帽の女』でパリのレジスタンス運動を描いたジブラが贈る戦時下のもうひとつの物語。1943年初夏、ドイツ占領下のフランス南部の村カンベラック。村の青年ジュリアン・サルラはドイツへの強制労働行きを逃れてこっそり戻ってくるが、乗っていた列車が彼の脱走直後に爆撃されてしまい、死んだことになってしまう。以来彼は広場に隣接する空き家の屋根裏に身を潜め、鎧戸の隙間から村人の営みを覗き見るようになる。民兵やドイツ軍によって穏やかな村にも緊張感が漂うが、彼の関心事は戦況よりもむしろ恋人セシルの動向だ。秋にドイツから帰還した若い医師ポールと親しげなのも気に入らない。大晦日、外出したジュリアンは雪のせいで隠れ家に戻れなくなり、セシルの家の納屋で凍えそうになりながら年を越す。