折口信夫(釈迢空)は近代日本にまるで奇蹟のように、古代の心、古代の詩歌のひびきを、鮮烈に蘇らせた歌人であった――。短歌滅亡論を唱えるも、その真意は再生への願いであり、日本語の多彩な表記を駆使しながらつねに短歌の未来と格闘し続けた。折口が残した6冊の歌集に私家版・自筆選集、短歌拾遺、さらに関東大震災に直面し、短歌形式に収めることのできない苛烈な体験を詠んだ詩作品含めた、初の文庫全歌集。「葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」生涯「旅びと」であった折口の姿が立ち現れてくる。(目次)海やまのあひだ春のことぶれ水の上遠やまひこ天地に宣る倭をぐな私家版・自筆選集短歌拾遺詩拾遺解題解説 岡野弘彦略年譜作品初句索引