農家の娘として、農村で父たちとつましやかな生活を送るララ。ある日彼女は、借金まみれの領主から男爵家を買い取ることになった。こうして女男爵となったララに、貴族との婚約話が舞い込んでくる。その相手は、伯爵家の子息で王都で近衛騎士をしているクロードであった。生まれ育ったベラージュ村を離れたくないララは、この婚約話を破棄しようと考えていた。一方のクロードも、婚約破棄を決意していた――なぜなら彼は女嫌いだったからである。意を決してクロードは、直々にベラージュ村へ婚約破棄を伝えに向かう。そこで彼は、働きもので芯をしっかり持った女性であるララに惹かれていく。ララも、優しく実直なクロードに恋心を抱くのだった。ともに相手へ婚約破棄を告げようとしていたふたりだったが、いまでは互いに結ばれることを望むようになる。だが、ベラージュ村を離れることができないララと近衛騎士として王都を離れることのできないクロードの恋は、ともに住む世界の距離という壁があった。これを乗り越えようとする二人の前には、王妃のクロードへの執心という、さらに険しい障壁が待っていて――。