中山薫は美術大学に通いながら、日常にモヤモヤしていた。母のさゆみと死別した父との馴れ初めは、聞いた話が本当のようには思えない。卒業してからの将来に不安を覚え、友人の柚菜と冴えない日々を送っていた。柚菜からアルバイトを紹介され、画廊のオーナー佐川守と知り合う。佐川はたびたび薫を夕食に誘い、フランス遊学の楽しかった思い出を語った。次第に薫は佐川に惹かれていった。絵のモデルを務めた時、薫は画家の小竹に襲われる。薫は何とか逃げ出すが、そのことで佐川を疑って八つ当たりする。感情的になった薫は好きという気持ちを佐川にぶつけ、二人は結ばれる。佐川の子を身ごもった薫は大阪の真下直美の元に身を寄せる。やがて子供を出産した後、養子に出した。出版社で編集をしているさゆみのベストセラーのお祝いに二人が料亭で飲んでいると佐川と遭遇する。酔ったさゆみは昔、佐川と自分が付き合っていたこと。結婚直前まで行ったこと、そして薫の本当の父親が守であることを打ち明ける。薫は自分の出産を隠したまま、逃げるようにフランスに画家修行に行く。フランスで貧乏に打ちのめされて帰ってきた薫は、真下の喫茶店を手伝いながら居候する。そこに新人アルバイトとして幸子と名乗る少女が来る。薫は名前と生年月日から我が子と疑い、その証拠を探す。だが、ふらりと現れた佐川の息子雄太と幸子の仲が深まるのを恐れた薫は、幸子を喫茶店から追い出し、雄太を連れて誰も来ない場所に移り住む。そこに、すっかり年老いた佐川が現れる。◆ さら・シリウス:あらすじ◆ 春日 寛:文章