できるなら、あなたの人生に乗り換えたい……。30歳の大倉玉青は、人材派遣会社に登録し大手通信系企業の受付として働いている。大学時代は、演劇サークルに所属していた。愛読書の『走れメロス』をバッグに放り込み、苦行のような満員電車に乗り職場へ通うのは、ただ生活のためだけだ。その生活が空虚で、何のために生きているのかわからない。彼女は、5年前の自分の選択に端を発するある「秘密」を抱え、その秘密に関わる者の存在を「希望」と感じながら、日々を過ごしていた――。女優、作家として幅広く活動する著者が、「入れ替わり(トランスファー)」の起きた女性の3ヶ月を綴った「読売プレミアム」連載長篇、待望の書籍化。