大戦の影響で好景気が続く大正時代半ば。不動産業を営む榎本は工場建設用地である山奥の森を訪れた折、ひっそりと佇む祠を見つけた。ほんの好奇心からその中を覗いた榎本が目にしたものは、ひとり絵を描く美しい青年の姿。抜けるように白い肌、肩まで届く銀色の髪、そして鮮やかな赤い瞳。弓弦と名乗る、この世ならざる美貌の青年に誘われるまま、榎本は彼と体を繋げてしまう。あどけない笑顔や言動とは裏腹に、弓弦の体は熟れた果実のように甘く蕩け、榎本を底なしの快楽へと導く。弓弦を東京に連れ帰り、自分だけのものにしたい――制御できない灼けつくような想い。共同経営者の塩崎の困惑をよそに、弓弦を己の邸に住まわせることにした榎本。弓弦への執着は次第に常軌を逸したものになっていき……。妖しく艶めく大正エキセントリック浪漫。