色川武大・晩年の短編集『引越貧乏』『明日泣く』や、御仲十の名で記した未完の時代小説『虫けら太平記」を収録。『引越貧乏』は、1980年6月から色川が亡くなる直前の1989年2月まで、断続的に「小説新潮」に掲載された7つの短編の作品集。「五十歳記念」「風と灯とけむりたち」「引っ越し貧乏」等、[死へのまなざし]が底辺に潜む良作揃い。『明日泣く』は、同じく1980年2月から1989年2月まで「週刊小説」に断続的に発表された11編の作品集。’男の生きざまを描くシリーズ’として色川の思い入れの強かった作品。「男の花道」「男の十字路」「男の旅路」「オールドボーイ」に加え、阿佐田哲也名義で発表された「人生は五十五から」は必見。『虫けら太平記』は、かつて志摩夫名義で記した短編「剣と鍬」を長編化した時代小説。新たにペンネーム御仲十(みなか はりつけ)を名乗り、久方ぶりの時代小説に本格的に打ち込んでいたが、色川の急逝により、第一部のみで未完に終わった作品である。付録として、競馬、将棋に精通し、色川と一緒に地方競馬場旅行もした作家・山口瞳が「男性自身」に記した追悼文「色川武大さん」「続色川武大さん」を再録。『虫けら太平記』等の直筆生原稿も収録。解説は、作家の佐伯一麦氏、解題は、大槻慎二氏が務める。