本書は、澤田貴司が初めて語る、新生ファミリーマートの挑戦を描く物語である。コンビニエンスストアは成長の踊り場に差し掛かっている。成長の鈍化、店舗数の飽和、営業時間の問題、人手不足……。ファミマの年間売上高は約3兆円。全国約1万6500店舗で働くスタッフ総数は約20万人。年間の購入者は延べ約55億人。これだけのスケールの巨大ビジネスを、いったいどのようにして変革へと動かしていくのか?2016年9月、サークルKサンクスと経営統合した新生ファミリーマート。その社長に澤田貴司が就任した。現場第一主義を徹底して貫くことで企業を再生させてきた澤田が、新生ファミマの改革で重視したのも、現場だった。澤田は、全国の店舗を精力的に周り、現場の声を聞いた。ここから新生ファミマの躍進が始まる。社員とも積極的にコミュニケーションをとり、新商品開発、宣伝にかかわり、デジタル戦略を強化し、地域とのつながりを深める……。澤田がなぜ、ここまで情熱を注ぐのか。それは20年前のことが、いまにつながっている。ファミマの筆頭株主は、伊藤忠商事。その伊藤忠が、かつて伊藤忠を辞めた澤田を指名した。そもそも澤田が伊藤忠を辞めた理由は、「どうしても小売業をやりたかったから」だったのだ。その澤田が20年後、伊藤忠の最重要企業の1つ、ファミマの社長を委ねられることになるのである。まるで奇跡を描いたドラマのような話なのだ。踊り場に差し掛かっている巨大ビジネスを大きく変えていく取り組みを広く紹介することは、再生を目指す日本企業に大いなるヒントになるだろう。