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ダマして生きのびる 虫の擬態

著者は2021年の夏に兵庫県の伊丹市昆虫館でオンラインにより「昆虫の擬態」についての講演を行った。
本書は好評だったこの講演をもとにまとめられたものである。
著者は昆虫写真家として50年ぐらいのキャリアがあるが、そのテーマの一つが世界のいろいろな擬態昆虫の写真撮影である。
その成果は『昆虫の擬態』(平凡社、自然写真協会賞)ほかの写真集にまとめられている。
本書はそれらの中から選りすぐりのカットを採用して長年の活動の成果を見せてくれる本だ。
またQRコードをところどころに付してあり、著者の作った昆虫の精細動画を見ることもできる。
昆虫の「擬態」という不思議な生態に触れるのに、本書ほどの格好な入門書はないだろう。
擬態は英国の博物学者でダーウィンなどと同時代のベイツなどにより発見された現象である。
植物の葉(コノハムシ)、枝や木の皮(カレエダカマキリやナナフシ)、花弁(ハナカマキリ)などに擬態(そっくり真似る)することから始まり、強い虫(アリやハチや毒虫)のカタチや模様を真似するもの、ヤママユ蛾などのようなビックリするような色彩やメダマ模様を隠していて触れると突然それを見せて威嚇するものなど、何種類かのパターンがある。
現象としては明らかだが、それがどのように進化の過程でその昆虫に備わったかのかは、実は今日まで完全に解明されたわけではない。
本書の25ページにあるムラサキシャチホコの枯葉が丸まったような形態など、だまし絵の画家が描いたような見事さであるが、ではなぜ人間の目にそのように見えるのかは(見える必要があるのか)はよくわかっていない。
本書のまえがきで著者は「鳥の目、虫の目、ダマす虫」という一文でこう書いている。
「昆虫たちはどのようにして、擬態を進化させてきたのだろうか。
――昆虫が身を守りたいのは捕食者からである。
――そのなかで優れた視覚を持ち擬態の効果があるのは鳥類である。
つまり昆虫の擬態や威嚇は鳥に向けて開発されたものなのだ。
それでは鳥には昆虫はどのように見えているのだろうか。
――ともかくも擬態を考える上で、人、鳥、虫の3者の関係を考えることはとても重要なことだ。
」「――なんだか不思議な姿をした昆虫がいるなと思ったら擬態を疑い、それが何の真似をして、どんな得があるのか。
また誰がだまされているのかを考えてみるのは面白い。
この3者の関係に気づけることが、生物進化が起こした『自然のだましあい』という面白さを体験する醍醐味だ。
」自然を考えるためのヒントとしてこの「擬態」現象に着目してみる、その入門書として作られている一冊だ。




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