幕末の薩摩藩において西郷隆盛や大久保利通などとともに明治維新に大きな役割を果たした五代友厚。明治の世では、危機的状況にあった大阪経済を立て直すために現在の大阪商工会議所のもととなる大阪商法会議所を設立し、また現在の大阪市立大学の淵源となる大阪商業講習所を設立するなど、多大な功績を残した。しかし、晩年の「北海道開拓使官有物払い下げ事件」によって、藩閥政権との癒着による「政商」としてイメージが広まってしまった。ところが、官有物の払い下げは五代とは別の結社にされようとしていたことや、当時の政局の中で五代がスケープ・ゴートにされたこと、また当時の新聞の誤報を後世の歴史学者がそのまま論文にして定着させたことなどがわかってきており、事実が誤って伝えられていることが明らかになってきている。本書は、膨大な資料を丹念に調べあげた上で新たな考察を加え、五代の真の姿を描き出す伝記の決定版として発刊する。