歴史小説の新鋭が書き下ろした、驚くべき大作!寛政十年(1798)十月、長崎湾の沖合で巨大オランダ船が座礁した。船は底部を大きく損壊して浸水。浜近くへ曳航したが再び座礁、沈船となった。オランダ商館は長崎奉行所に積み荷の陸揚げを要請。奉行所は町方村方にまで浮かし方の工夫を募った。そこへ名乗りを上げたのは、周防の廻船商・村井屋喜右衛門だった。だが奉行所と長崎代官は喜右衛門の工夫を盗み、長崎の町衆に引き揚げを命じた。はたして沈船の引き揚げは成功したのか?「この小説家は初めて過去の歴史的な素材を描くに当たって、あえて無名の、しかも地方の庶民を選択した。‥‥むろん負荷も、また力負けする危険も高い。」飯嶋和一にハズレなし! と賞される歴史作家・飯嶋和一氏は、本書に特別に寄せた推薦文でこう語った。そして続ける。「中心人物はいずれも海村の次三男である。家を継ぐ長男以外は『余計者』であり、穀潰しでしかない。‥‥既存の頑迷な社会システムに屈従して生きるのか。あるいはそれをくつがえすのか。‥‥くつがえそうとすれば、かなりの圧力が社会から加えられることになる。が、必要なのは勇気と知力だとこの小説家は語る。はかなく脆い夢や希望ではない、と。」現実に起こった事件をドラマチックに描いた、傑作歴史小説。