さまざまな苦難に耐えながら、彼らは強く生き抜こうとする。在日コリアン一家の苦難の物語は戦後へ。「物語」というものの圧倒的な力を見せつける大作は1989年に幕を閉じる。劣悪な環境のなかで兄嫁とともに戦中の大阪を生き抜き、二人の息子を育てあげたソンジャ。そこへハンスが姿をあらわした。日本の裏社会で大きな存在感をもつハンスは、いまもソンジャへの恋慕の念を抱いており、これまでもひそかにソンジャ一家を助けていたという。だが、早稲田大学の学生をなったソンジャの長男ノアが、自分の実の父親がハンスだったと知ったとき、悲劇は起きる――戦争から復興してゆく日本社会で、まるでパチンコの玉のように運命に翻弄されるソンジャと息子たち、そして孫たち。東京、横浜、長野、ニューヨーク――変転する物語は、さまざまな愛と憎しみと悲しみをはらみつつ、読む者を万感こもるフィナーレへと運んでゆく。巻措くあたわざる物語の力を駆使して、国家と歴史に押し流されまいとする人間の尊厳を謳う大作、ここに完結。AppleTVでドラマ化決定。解説・渡辺由佳里