一生懸命にご家族を介護しているのに、突然怒鳴られたり、イヤだと言われてしまうことがあります。 また、介護をしていると、何度も同じことを尋ねられる、どうしてもごはんを食べてくれない、お風呂に入ってくれない、などという体験をすることは珍しくありません。 認知症になると認知機能の低下から、こちらが「良かれ」と思って行っていることがうまく伝わらなくなることがあります。 そんなとき、介護をとても辛く感じたり、つい怒ってしまって「優しくできなかった」と自分を責めてしまうことすらあります。 しかし、それは介護をしている人の優しさの問題ではないのです。 相手に受け入れてもらえないとき、それはその「届け方」に問題があることが多いのです。 ですから、認知症の方に介護者の気持ちを伝えるための技術が必要になります。 それが「ユマニチュード」です。 ユマニチュードは、‘人間らしさを取り戻す’という意味を込めて、フランスの体育学の専門家であるイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが考案したケア技法です。 ユマニチュードは、認知症である前に尊厳のある人間に対する敬意を最重要視することを前提に、見る、話す、触れる、立つ、の4つの技術を大きな柱に、誰もが再現可能な技法としてまとめられました。 介護を通して、認知症の方に、言葉や表情、態度などで「大切に思っている」ことを伝え続けることで、その人の‘人間らしさを尊重’し、‘つながりを深めていく’技術なのです。 寝たきりだった認知症の方がユマニチュードによって立ち上がることができるようになるケースもあり、それは「まるで魔法」と表現されるほどです。 ユマニチュードはNHKの番組などでも多く取り上げられ、話題となっていますが、一般の人がいざ家庭で実践しようとすると、どうしていいかわからない、うまくいかないことも多くあります。 本書では、ユマニチュードの基本的な考え方や、家庭内で誰もが実践できる技術を、平易な文章とたくさんのイラストによる図解でわかりやすく紹介します。