介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に至る――といういわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。親の介護には相応のお金がかかります。入居施設の中でも利用料が安い特別養護老人ホームでさえ、一人当たり月額およそ15万円程度、両親とも入所させる場合は30万円程度の費用がかかるのです。そのため、「介護サービスの費用が払えないので、仕事を辞めて自分で介護するしかない」「施設利用の費用を捻出するために預金を食いつぶしている」といったケースが増えています。離職による収入途絶や重い介護費用負担によって家計のやりくりが難しくなった子世帯を待ち受けるのは、「貧困から破産へ」という最悪のシナリオです。介護サービスは年々充実してきているにも関わらず、最適なサービスや施設はどれなのか、公的援助はどうすれば受けられるのか……といった基本的なことも一般にはほとんど知られていません。そのため、不必要に高額なサービスや施設を選んだり離職したりして、経済的困窮や破産に至ってしまうケースが後を絶たないのです。しかし逆に言えば、利用する側が積極的に動いて情報を集め、最適なサービスや施設を正しく見極めたうえで、公的援助なども活用すれば、介護破産に陥るリスクは大きく軽減できます。本書では、著者の長年にわたる介護業界での経験をもとに、介護破産の実態、介護サービスの基礎知識、要介護者や家族の条件に合ったサービスや施設を選ぶポイントについて、具体例を示しながら解説していきます。